GWは美唄で

ゴールデンウイークの後半、道内はほとんどが雨の予報だった。今年は桜の開花が早かったので花見は前半で済ましていたが、せっかくの休みなのでどこか行こうと家族の一人が言ってきた。手軽に行けそうなところを調べてみる。日帰りであまり遠くないところ。できればもう一度桜を見たいなあと思っていたら美唄に桜の名所があった。

札幌よりも北にある美唄は、丁度桜が見頃であるようだ。美唄焼き鳥も食べたいし、安田侃の美術館もある。天気予報ではその日が雨、場所によっては雷雨の注意報が出ている。近頃の天気予報はほぼ当たるので少し迷ったが、荒れた安定しない天気なら、それはそれでひょっとしたら時折晴れるかもしれない。焼き鳥と美術館なら雨でも大丈夫だからと自分に言い聞かせ、GWの美唄行きが決まった。
我が家から美唄までは、この時期、片道2時間半程度かかるだろう。高速を利用すれば30分は短縮できるが、高速を利用しないというのが我が家の鉄の掟(要はケチって)。だから回り道を厭わない。適当な時間に出発して、適当な時間に帰ってくる。これでいい。
出発の札幌では晴れていたが、だんだん暗くなって雨模様。目的の空の方を見ると、さらに真っ黒な雨雲が控えていた。暗い気持ちになりかけていた途中、ワイナリーの看板が目に入った。先を急ぐこともないか思い、ちょっと寄り道をしてみる。
見回すとこの一角、適度な起伏があってロケーションも悪くない。ここにワイナリーがあるのは知らなかった。高速道路を真直ぐ目的地に行けばここには来られなかったわけで、高速を使わない鉄の掟も捨てたもんじゃないなあと思う。案内板を頼りにブドウ畑の小径を登り、建物に近づくとこの悪天候にもかかわらず何台かの車が止まっている。それなりに知れた場所であるのだろうか。
ここは「宝水ワイナリー」といって、地元岩見沢の有志が出資して2006年に設立されている。映画「ぶどうのなみだ」(主演・大泉洋)のロケ地にもなっていたので、ファンなら当然知っている場所ということだろう。何かの縁とワインを物色していたら、家人がポン!とここにあった新作の限定品ワインをプレゼントしてくれた。よほど欲しそうな顔をしていたのだろうか。人生、寄り道にこそ幸がある。

寄り道では大雨だったが、すぐに上がり美唄では若干晴れてきた。今がチャンスと桜祭りの会場に向かう。
美唄の桜名所は美唄駅の北東約4キロ。エゾヤマザクラやチシマザクラ、そして日本最北限で咲く(らしい)ソメイヨシノなど約2,000本もの桜が自慢の東明公園にある。この日は桜祭り日となっていた。会場近くで車を誘導され、てっきり駐車場かと思って進んでいったら別の道に案内され、そのまま放置。どういうことだろう? Uターンして誘導員に駐車場を尋ねてみるも、曖昧な返事で駐車場を教えてくれた。聞いた僕が悪かったのだろうか。無事に駐車場に止めて10分ほど坂を登ると桜の見どころに着く。展望台があってその丘に沿って山桜が数本咲いていた。期待していた感じではなかったので、さらにぐるーっと反対側まで回る。そこにも駐車場があって「なんだ、こちらまで来れるじゃないか」。

こちら側はなかなかいい。小径の両側にソメイヨシノが咲いていて、桜祭りに相応しい華やかさだった。余談だが、今日の夕方には、僕は知らないけれど小樽在住のシンガーソングライター小林初香(そのか)さんのコンサートがあるらしい。旅先などで駆け出しのアーティストをたまたま見かけ、後で有名になったりするとちょっと得した気になり、あちこちで自慢したりする。気になったけれど、夕方までは待てない。そのまま公園を1時間ほどゆっくり回って花見を終える。夕方まで雨が降らなければいいのだけれど。
さて、とっくにお昼を回っているので焼き鳥タイム。美唄焼き鳥といえば「三船」「鳥乃家」「たつみ」「福よし」が有名らしい。今日は「たつみ」をチョイス。すでに2時近くだったが「たつみ」は込んでいた。30分以上待たされて席に案内された。僕たちの4、5組後はランチタイム終了したのでラッキーではあったけれど、料理の注文は人気の「鳥めし」が売り切れでAランチのみだった。しかも注文してから料理が運ばれるまで随分と待たされた。食べ終えて帰り際でも、焼き鳥持ち帰りコーナーの列が続いていた。相当の人気店だと知る。
Aランチは焼き鳥に蕎麦、冷奴と新香付きで700円。お腹一杯になって美味しく満足度が高い。待たされたけど、また機会があったら寄ってみたいと思う。

お腹が満たされて、今度は芸術鑑賞。アルテピアッツァ美唄に向かう。「アルテピアッツァは幼稚園でもあり、彫刻美術館でもあり、芸術文化交流広場でも、公園でもあります。誰もが素に戻れる空間、喜びも哀しみも全てを内包した、自分自身と向き合える空間を創ろうと欲張ってきました。この移り行く時代の多様さのなかで、次世代に大切なものをつないで行く試みは、人の心や思いによってのみ紡がれます」・・・彫刻家・安田侃はこの地をこのように語っている。野外に彼の彫刻作品が自然と呼応するように置かれ、かつての小学校が幼稚園として、また彼のアトリエとして残っている。僕らの世代としては、懐かしく心休まる空間だった。ただただ丸い白い大理石の彫刻を触っていると、とても気持ち良くて癒される。

帰りは、国道12号線途中、三笠にある「三笠温泉 太古の湯」に寄る。ホームページの太くて広い天然木の湯船に惹かれた。檜風呂と石風呂の広い露天風呂もあった。ネーミングも何気に立派で、効能が良さ気ではある(気がする)。実際、天井が高く広くて気持ちが良い。肌もすべすべしていい湯だった。しかしながら天然温泉とは謳っているもののどの程度の温泉であるかについての詳しい情報は、HPでは見当たらなかった。若干気にかかるところではある。

帰りは雨も上がり、裏道は車も少なく順調だった。が、周囲が田圃や畑の裏道は真っ暗で何処を走っているかよく分からない。若干の回り道をして我が家に着くことになってしまった。