禁断の園、大通ビアガーデン

8月になった。北国の夏は、あっという間に駆け抜けていく。この時期、あちこちで夏祭りが開催される。札幌では、先月20日から、「さっぽろ夏まつり」が始まった。ご存じない方のためにひと言で説明すると「大通公園を巨大ビール園にして、最後は盆踊りで締める」という都市型イベントで、昭和30年代から始まった伝統的行事であるのだ。今年は17日まで開催されるが、ビアガーデンは15日まで。残りの2日間は盆踊り会場となって、札幌の夏は終わる。

ボーっとしてたら終わっちゃうので、早速、行ってきた。20日のオープン日に(笑)。サラリーマン時代のこの時期、大通公園を通るのはホントに辛かった。ビアガーデンは昼間から営業しているから、当然、観光客なんかが飲んでいる。「うっ、羨ましい・・・」ってなことで、サラリーマン辞めたら、俺も平日の昼間から飲んでやる!と強く心に誓ったわけで。いま、こうして実現しているということは、意志が強いというほかない。
昼間のビールはいいネ。こと更美味く感じる。しかも酔いが早い。席も空いていて、周りがあまり騒がしくないのもいい。ビールや肴も直ぐに頼めてグイ、ゴクリ!。周りを見ると、同じような年代が多い。きっとみんな、同じ思いで来ているに違いないと、勝手に決めつける。
学生時代、東京タワーの下のビアガーデンでアルバイトしていたことがある。仕事が終わると、ジョッキーに自分でビールを注いで飲めるという特権があった。余ったフランクフルトを頬張って、汗を流して飲むビールは、金がない身分とその日の苦労を忘れさせてくれた。そんな昔のことを古い友人と語りながら、ビールを飲むのである。幸せなひと時に感謝する。

おお、学生よ!
君がビールを飲んでしたことは
飲まなきゃ
そううまくいかなかったろう!
(byゲーテ)

大通のビアガーデンには長いことお世話になった。仕事中にすでに大通を通ったときに刺激を受けているので、夕方になるとソワソワ。「行くか!」と同僚にアイコンタクト。早めに仕事を終えて行くことになるが、6時を過ぎると、この巨大なビアガーデンも同じようなグループ連れで満席になる。なかなか席が取れなくて、大通をさまようこともあった。懐かしい知り合いに会うこともあるが、会いたくない取引先とも出会う。酔うほどに仕事の愚痴や上司の悪口で声高になる人も多い。時には旅行客と地元サラリーマン、また女性グループも入り乱れたりして、普段の飲み方とはちょっと違った雰囲気になることもある。きっと札幌という開放感のある土地柄がそうさせてくれるのだろう。旅行客は言う。「札幌で飲むビールは美味い!」

20日は6丁目のアサヒ会場。木に囲まれていて暑い日中はおすすめ。込んでいなかったからなのか、食べ物が温かくて美味しく感じられた。今年から、会場内が全席禁煙になったのは大歓迎だ。初日ということもあり、報道陣が多く、地元テレビ局の取材を受けてしまった。

さらにこのビアガーデンのいいところは、好きな銘柄のビールが飲めること。5~8丁目の国産4銘柄に加え、10丁目には世界のビール広場、一番端の11丁目はドイツ村があって、その日の気分で選べる。込んでいる時は、だいたいこの辺まで来ると席を確保できることになる。札幌ならではの大掛かりで個性的なビアガーデンだが、残念なことに騒音の苦情などの理由で、夜の9時で閉店となる。以前は、10時まで営業していたのに。最近は、どこに行ってもこんな感じの問題が起きて閉店あるいは中止に追い込まれている。近隣の飲み屋も、早目の閉店は支持しているらしい(ホントかなあ)。僕等は、ここで飲んで景気付けて、必ず次の店に行ってたのに。時代なのかなあ。大丈夫か、来年のさっぽろ夏まつり? 開放感いっぱいの札幌のビール文化が、長く続いてほしいと思う。以前の「YOSAKOIソーラン祭り」のときにも書いたけれど、札幌に住んでいるからには、その土地の文化伝統を尊重して、大目に見てもらいたいし一緒に楽しんでもらいたい。その街がもっと好きになると思うんだけどなあ。