豊平峡への道

やっと豊平峡に行ってきた。(前回「オータムコレクション」参照)

前日の日曜日夕方、定山渓方面から札幌市内へ向かう道路がいつになく混んでいた。天気が良かったので、秋の行楽の帰りなんだろうかと勝手に推測。そうしたらたまらなく豊平峡の紅葉が見たくなった。ウェザーニュースで調べると、明日も晴れるとのこと。大分冷え込んできたが、豊平峡の紅葉はどうなんだろう? テレビの地元情報ではピークは過ぎたと伝えていたが、まだ大丈夫だろうか。

翌朝は快晴になった。本当は、前日から始めた屋外のペンキ補修の予定だったが、それは明日やることにしよう。こんな天気のいいチャンスを逃す手はない。今日は月曜日だから道も空いているだろうと、9時過ぎに家を出る。
札幌の中心地からだと、目的地の豊平峡へは約1時間程度。我が家は南区。それに裏道を通るので30分少々で着くだろう。最近、定山渓までの行程がほとんど片道2車線へと拡張された。かつて札幌の奥座敷と言われる定山渓が、とても近くなった。札幌市民が気軽に温泉を楽しめるいい時代になったということだ。
僕が札幌市民になった30年前は、温泉への道は遠かった。この定山渓への道(通称、石山通)は、郊外から都心への、また市内から定山渓、中山峠、ニセコ方面への幹線道路ではあったものの、郊外に出ると片道1車線となり渋滞することが多かったのだ。ゴールデンウイークや秋の連休、それに冬のスキーシーズンとなると、行きも帰りもウンザリさせられた。
それが今や快適なドライブが楽しめる道路になった。中山峠へも随分と時間が短縮された。しかし、やっと道路が改善された今、人も車も減って昔ほど多くの人が集団で移動しなくなった。確かに渋滞は嫌だけれど、こんな広い道はこれからの時代必要なのだろうか。複雑な想い。
ま、郊外と都心が便利で近くなるのはいいことだ。札幌といっても南区は広いから、移動も大変だ。(ひょっとして、札幌南区は日本で一番広い「区」ではないだろうか?と、調べてみる。予想はハズレ。以前はそうだったが、現在は3番目であるとのこと。南区域の多くは支笏洞爺国立公園にも指定されている山林地帯だというのに、日本にはまだまだ広い区があるという。)
さて、スムーズに定山渓温泉街を過ぎ、幹線を外れて山道に入る。豊平峡温泉を左手に見てさらに細い道へ。例年、この辺りから渋滞が始まって、ちっとも前に進まず途中でUターンする車を見ることになるが、今日は大丈夫だ。駐車場に着くと、大型バスが何台も来ていて、多くの人が豊平峡行きの電気バス待ちで並んでいた。人手の多さにちょっと驚く。
この先は一般車両は通行できない。この電気バスに乗るか、歩くかの選択。豊平峡まで2km程度だったので歩いても良かったのだが、目の前がトンネルで、通路も狭く暗くて先が見えない。ボヤっとしているとどんどん混んでくるので、バスの列に並ぶ。ほどなくしてバスに乗れたが、前を見ると何人かが歩いていて、ちゃんと歩道もあった。これならバスに乗る必要もなかったかな。
トンネルを2本くぐると、豊平峡ダムがすぐ目の前に広がる。ここが終点のバス停。左手にダム湖があり秋の日差しを受けてキラキラ光っている。風もなく、思ったよりも温かい日でラッキー。ダムの右側は深くて狭い渓谷。白いコンクリートの壁からは放水されているのが見える。遠く扇状に広がる渓谷はいったいどのくらいの広さであろうか。向かいの山が近いのか遠いのか、岩肌を埋め尽くす赤・黄・緑の模様が浮き上がるばかりで立体感が掴めない。赤色はヤマブドウ、ナナカマドだろうか。イタヤカエデ、シラカバが黄色? 緑色はトド松? ちょっと知ったかぶりしてみたm(__)m強烈な秋の日差しで、遠い谷の紅葉に黒い影ができている。その影に向かって手を振る。影が少し揺れる。自分が映っているのだ。

紅葉とダムの影。
紅葉に抱かれたレストラン。屋外でバーベキューができる。

ダムの上の急斜面を5分ほど登るとレストランと展望台があって、ここからの眺めが素晴らしい。今日のこの天気なら、ここでジンギスカンとビールもイケるな、と思う。でも今日は我慢。いつか気の合う仲間と、ここで贅沢な時間を楽しみたいものだ。さらに上を目指して細い道を10数分歩くと、もう一つ高い展望台に出る。ちなみに近くをゾロゾロ歩いていた観光客の多くが外国人で中国語が飛び交っていた。最近はいつも思うことだが、こうした観光地は外国人のお陰で助かっているなあと。そもそも、紅葉のシーズンこそ地元の人は来るけれども、あまり知られていないマイナーな観光地だと思う。しかも平日のこの時間にこれほど集客できているのだから驚く。

展望台へのリフトカー。無料だけど超短い。歩いた方が断然早い。


このインバウンドブームが、これから先も続いてほしい。
お陰で売店もレストランも開いていて嬉しい。客が少ないと、どこもかも閉まっていて・・・というのは旅行していてよくあったことだ。我が物顔で写真を撮りまくり、トイレは少々混んで汚していくという残念なところはあるが少しの我慢だ。インバウンドをもっと大切にしよう。受け入れ側も、もっと情報を提供してほしい。ここへ来るのに「豊平峡公式ホームページ」を見た。もう少し期待に応えるような情報がほしいなあと思った。外国語サイトについても、英語のそれもわずか1ページだけなのは残念だ。

駐車場への帰りは歩くことにした。20分足らずで着いたから、今度ここへ来たときは、行きは歩いて帰りはバスにしようと思う。駐車場に戻ったら車の空きスペースはなかった。帰りの道は、かなりの車が駐車待ちで並んでいて、途中でUターンする車を何台も見た。この時間に来ていたら、おそらく今年も彼らの仲間になっていただろう。豊平峡の紅葉は侮れない。
お腹が空いたので、途中、豊平峡温泉に寄る。温泉とインドカレーは異質な組み合わせで奇妙だけれど、ここのインドカレーはインド人が作る本格的なカレーで人気のある店。いつも混んでいる。今日も満員御礼。温泉はすぐ入れるが、カレーは並ぶ。店の人から30~40分待ちと案内され、ちょっと迷ったけれど、待つことにする。この店ではチケットを買えば空いている広い座敷で座って待つことができる。20分も経たずに館内のスピーカーで呼ばれ、席に着くことができた。厨房のインド人(らしき人)と日本人(らしき)スタッフがきびきびと働いているのも、この店の人気がある理由かもしれない。遠い不便な場所だけれどまた食べに来たくなる。

食べ終えて店を出ると、外まで並んでいた。
大きいサイズのナン。これがまたうまい!