森のスターに出会う

札幌南区にある真駒内公園は、ご承知のように冬季札幌オリンピックのメイン会場となったところで、今の屋外競技場では開会式やスピードスケート競技が行われた。かなり老朽化したが、最近少し補修され、いろんなイベントが開催されている。四季を通じて自然豊かな表情を見せ、市民にとっての憩いの場だ。僕もたまに散歩や極々たまにランニングにも訪れる。この時期はさすがに少ないが、それでも休日になるとジョギングや歩くスキーを楽しんでいる人が結構いる。先日、愛犬と散歩していたら、公園の奥の林に人だかりができていた。いったい何があるのかと近寄ってみると、皆が同じ方向を見ていて、多くの人がカメラを構えている。近くの人にそれとなく尋ねると古木を指さし「ふくろう」と教えてくれた。

こんなところに人が・・・?

見るとあちこち枝の折れた太いイタヤカエデがあって、その中心の樹洞にちょこんと収まったふくろうがいる。白っぽいので気が付かない。折れた枝の根元のようにも見える。暫く見ていたが目をつぶったままで全く動く気配がない。この日は望遠は持っていなかったが、運よくカメラを持参していた。さっそく構える。隣りでは大きくて高価そうなレンズを構えてバシャバシャ連写している。「羨ましいなあ」と心の中で独りごち、僕は小さなカメラとレンズで控え目にシャッター音を鳴らす。

太い木の上の方に!

そして今日。もう一度ふくろうを求め、カメラを持って真駒内公園を散歩する。先日の場所に行くとやっぱりいた。同じスタイルで同じ木に収まっている。先日と同じように何人かのカメラマンがいて撮影している。今日は僕が持っている中で最も大きな150ミリのレンズを持ってきたので、少しは表情が撮れるだろう。実は、自然の中でこんな大きなふくろうにお会いできるのは初めてで、いい画が撮れるといいなあ。シャッターを何度か押すが、ほとんど変わらない画。やっぱり動かない。目も閉じている。生き生きとしたふくろうは、やはり暗くならないとダメなのだろうか。もう少し近づきたいがロープが張って、前に進めない。こうしてカメラマンが大勢いて、あまり刺激しないようにということか。今日もシャッター音がバシャバシャ響く。本人はというと全く動じず目を閉じ瞑想に耽る。この森のスターは、すでに貫禄十分である。

今日は時々陽も出ていて、気持ち良さげに目を閉じている。

僕にとって身近な真駒内公園が、このところ脚光を浴びている。というのも、北海道ファイターズの専用球場としてこの地が候補に上がっているからだ。北広島市との一騎打ちで、今年の3月頃には結論が出ると言う。日ハムファンの僕として、我が家に近い真駒内案になると嬉しいのだが。

今、構想として上がっている新球場に関して、ある関係者はこう話す。「オンリー・ワンか、ナンバー・ワンか。北海道の皆様の誇りになるような球場にしたい」「例えば、北海道へ旅行に行く人に『何のために?』と尋ねると、こう答える。『そりゃあ、美味しい海産物と◯◯スタジアムだよ』と」。
果たして実現できるかどうか分からないが、この発想はとても素敵だ。文化としての球場であり、街づくりの中心と成り得るボールパーク構想である。僕は、今の札幌ドームのあり方に関しては、札幌の文化や街づくりに関与していないように思っていたので、この新たな試みは歓迎する。誰かが語っていたが「今のドームは単に箱物ができただけで、何も生み出していない。私設の有料駐車場とマンションが増えただけだ。すでに10年以上なるが、地下鉄を降り、地上に出てもちっともワクワク感がない」
ホントにそう思う。駅から遠いというデメリットを語る人がいるが、考えようではメリットになり得る。あの歩く距離をどうして楽しい空間にできなかったのだろう。地下鉄から10分も歩けば着く距離は、手頃な距離感だと思う。今度の球場について、さらにこんなことも言っている。「入場料はいらないと思います。入りたい人はどなたでも入ってもらえばいい。そして、座って野球を観たい人だけ『座席料』を払っていただけばいいのではないでしょうか」
このように既成概念を覆す新しい球場が、札幌にできるのだろうか。2023年を目途に完成を目指すと言う。そうであれば真駒内は新しく生まれ変わる。我が家からも歩いて通えるわけで、老後の楽しみが大きく広がろうというものだ。でも待てよ!そうなるとあの可愛い森のスターたちは、どうなるのだろう?

四季折々の真駒内公園