秋の夕暮れの迷想

先日、友人と会うために久し振りに札幌の中心街、すすきのから札幌駅に向かって歩く。待ち合わせまで少し時間があったからだが、ふと空いた時間に遠回りしながらぶらぶらと歩くのは楽しい。運動不足の解消にもなる。まだ夕方の5時前だが、もう薄暗くなってきていた。今年の札幌は暖かいなあと思うが11月の北国、陽が沈むと急に寒くなってくる。コートのボタンを閉め、ポケットに手を突っ込んで寒さに備える。

さて、と前を見ると駅前通りを真っ直ぐ遠くまで望むことができる。街灯や店舗の照明も、おや?っと思うほど綺麗に輝いている。人それぞれ、表現の仕方はあるだろうが、僕にとっては、まさしくマジックアワー?と言いたくなる時間だった。信号待ちの見知らぬ女性も、この時ばかりは美しい被写体になる。スマホを取り出し、綺麗な街並みを収めてみる。つい最近カメラが壊れて修理に出している最中なのでコレしかない。いつもは持ち歩いているのだけれどなあ、残念。カメラが無いのが恨めしい。あったとしても実はたいしたショットが撮れないのも現実だけれど。

やっぱり「秋は夕暮れ」だな。空気の澄んだ札幌の秋の夕暮れは美しく妖しげだ。ところで、オリンピックのマラソンが札幌で行われることになった。多くの人が残念だと言う。札幌開催にいちゃもんをつける声もある。こんなことで東京人のテンションが下がるオリンピックなら、最初からやらない方が良かったんじゃないかといいたい。そもそも東京開催が決まる少し前までは、カネのかかるオリンピックは要らないという声が結構上がっていたじゃないか。さすが良識のある東京人は違うと思っていた。さて、その人たちはどこへ行ってしまったのか。今ではみんなのぼせ上がって、駄々っ子のようだ。「アスリートファーストがどうのこうの・・・」という人たちの言葉は、競技者には申し訳ないが「屁」よりも臭くて軽い。

歩きながら大通公園に差しかかったころ、そんなオリンピックのことが頭に浮かぶ。まったく人の心を勝手だ。そうだ、陽が沈んで涼しくなってきた夏のこの時間帯、マラソンスタートというのはいかがだろう。大通りや北大前もいいけれど、ぜひ、世界に誇る「すすきの」もコースに入れてほしい。巨大ネオンが輝き、赤提灯がひた走る選手の行き先を両側から仄かに導き照らす。スナックのママや馴染みの客が、手に手に店名が書かれた旗を振って声援を送る。これぞ、アスリートファーストじゃあないだろうか。この際だ、藻岩山まで駆け上がってもらい、新三大夜景の一つを眺めながらの折り返しというのもいいな。札幌らしいな、大きな番狂わせもあるだろうなあ、などと妄想の暴走が続く秋の夕暮れだった。