そして、神戸

また今年もオヤジ(否、ジジイだな!)旅行の季節がやって来た。還暦を過ぎ暇になったこともあって、気心の知れた学生時代のクラスメイト数人で、気ままにあちこち訪ねるのが、年に一度の僕たちの楽しみとなっている。

今回はどこにしようと、いろいろ悩み、みんな好き勝手に言い合ったものの「改修後の姫路城をまだ見ていない」と意見が一致。では、神戸に集合しようとなった。先ずは神戸観光をして一晩過ごし、翌日は姫路城見学、そして赤穂の温泉に泊まり、神戸に戻って解散というザックリしたスケジュールを組む。

大阪・京都までは何度か行ったことがある。しかし神戸の街はなかなか行く機会がない。北海道人は、みんなそんな感じだろう(と勝手に思う)。神戸といえば「クールファイブ」だ。これがオヤジの十八番。つい鼻歌が出る。そして「メリケン波止場」「異人館」「元町中華街」「ポートタワー」「六甲山」と続き、「神戸牛」「スイーツ」などを思い浮かべる。横浜に近いイメージだが、さてどうだろう。

実際、神戸をあちこち歩いてみて一番に感じたのは「坂がキツイ!」(笑)。地図では立体感が分からないので、想像と距離感が随分と違ってくる。「新神戸駅」で坂道の洗礼を受けてしまった。待ち合わせで、三宮から新神戸駅に向かったのだが、地図で見る限り歩いても簡単そうだし、地下鉄と新幹線「新神戸駅」は、すぐ近くにあるように思える。新神戸駅から異人館街も、さほど無理なく観光できそうだと甘く見ていた。でも、この日は朝から蒸し暑い日だった。分かりにくい新神戸駅を上がったり下がったり、オヤジたちはかなり無駄な体力を使い、その後の異人館街の坂ではヒーハー状態だった。

北野異人館ってお高いのね

坂道を登りながら考えた。どうやら、いい展望は、お高い異人館に入場しないとお目にかかれないようだ、と。でも、北野天満宮の急な階段を登ったら、こんな素敵な景色に出会えた。
休憩をはさみながらも、狭い坂道や階段を登りたどり着いた場所。「うろこの家」「山手8番館」「北野倶外国人楽部」など、名前は素敵なんだけれど、よく分からない異人館が点在する。

正直に言おう。神戸観光の象徴的なビジュアルのひとつである異人館には、ちょっとガッカリしたところがある。あまりにも商売っ気が強過ぎるのだ。ぶらぶら歩いていたら「割引券あります」的なチラシが貼ってあって、先ず違和感を感じた。オヤジはこの手の話には身構える。過去に痛い体験をしているからだ。後で知ったのだが、異人館はほとんどが有料で、場所によっては結構「お高い」。だからセットで入場券を購入するのが賢明ですということらしい。え、そうなの? 「なんて素敵なサービスだろう」と、僕は絶対に思わない。

ご覧のように太陽が照りつけ、異人館までの道のりは厳しかった。でも、平日で人手が少なくゆっくり歩けたのは幸運だった。

お高い階段坂をヒーハー言いながら登り、「おや素敵な建物がある」と近づいてみると「この庭からの展望は素晴らしいです」とニコニコ案内される。喜んで進むと「ハイ、入場料」。そして「他にも○○があって、セットで買うとお得ですよ」となる。このセット料金が、またお高い(あくまでも僕らにとって、です)。繁華街の客引きを思い出す(僕にとって、です)。綺麗な洋館と素敵な案内人の笑顔が、どうも心をカサつかせるのだ。異人館を維持するには、結構な資金が必要なんだろう。いろいろな事情があるのかも知れない。が、神戸の貴重な文化遺産に対してこのような商売方法はいかがなものか。目を移すと路地では朽ちていく建物や空き地が随分と目立ち、錆びれた空気が漂う。これから先、この街はどうなるのだろう。そんな不安を抱かせる北野異人館街観光だった。

北野天満宮からの眺め