帯広の濃い一日の過ごし方

パークゴルフと豚丼とばん馬と北の屋台

今度北海道に行くけれど「どこがいい?」とよく聞かれる。難しい質問だ。そう簡単に答えられないので、時期とか目的とか、誰と来るのかなどいろいろ聞くことになる。ネットで詳しく調べている人がいたりして、そういう場合は却って厄介だ。かなり面倒くさい(^^;) それに北海道は広いので、実は僕もよくは知らないのだ。

困ったときは、僕は帯広をお勧めする。時間があまりなくても、ギュッと詰まった北海道らしい場所としての個性を、帯広は持っているような気がする。

ということで、今回はタイトルにあるように、帯広の良さを文字通りギュッと縮めて紹介したい。

爽やかな朝をパークゴルフで始めよう

パークゴルフをご存じだろうか? 今やかなりの知名度になっていると思うが、北海道、特に十勝地方ではメジャーなスポーツ(レジャーといった方がいいか)になっている。パークゴルフはこの地の幕別が発祥の地だ。詳しくは以下を参照

日本パークゴルフ協会

お勧めするスケジュールはこうだ。前日に十勝川温泉に泊まり、起きたら温泉に入って朝食を食べて、スッキリした気分で「幕別町営パークゴルフ場」に向かう。幕別には町営のパークゴルフ場がたくさん(10か所以上、ホール数だと多分200ホール以上)ある。そして、全てが使用無料ときたもんだ。僕の最も好きな日本語のひとつが、ここではごく普通に聞ける。実にスッキリ。

無料といったって、施設はちゃんと広く芝もしっかり整備されている。場所によっては夜間照明もある。町民の健康のために税金を投入しているのだ。町民でもないのにいいのだろうか? 用具も貸してくれるというので手ぶらでも大丈夫だ。クラブやボールも無料だったと記憶している。ただしスコアカードは無いので、メモ帳を用意しよう。僕たちがコースに出たときは、近くにいた人にスコアカードを尋ねたところ、あっさり「ない」との返事。その代わり自分たちの手作りカードを「どうぞ」とくれたのだった。幕別町民は親切だ!

さすが十勝。広々としたグリーンのコースは、普通のゴルフ場を思わせる。

地元の人たちにとって、マイクラブ、マイボール、マイカードは常識であって、ファッションも競技者風のこなれた感じ。もちろん競技の腕前も僕たちを圧倒し、後ろかに付かれたときはプレッシャーを感じた。町税も払わず、無料で使って下手だから「お先にどうぞ」と気を使う。そんな僕たちに地元町民は、嫌みのひとつも言わずに紳士的だった。いいぞ、幕別町民! ちなみに幕別町出身といえば、オリンピック金メダリストの高木姉妹、陸上の福島千里、ラグビー女子の桑井亜乃選手など。意志の強そうな女性ばかりだなあ。

幕張町に限らず周囲の市町村には、まだまだたくさんのコースがある。いろんなコースを回って町民と触れ合ってみてはどうだろう。池田町には、桜トンネルの穴場コースがあるという。近くではバーベキューも楽しめるらしい。

昼食はコスパ抜群の豚丼で満たす

帯広といえば豚丼。そのためにわざわざ札幌から日帰りしたこともある。有名な店は駅前の「ぱんちょう」だけど、ここは2度行って閉まっていたという縁のない店。個人的には「とん田」をお勧めする。2017年に移転して新店舗になった。駐車場も広く客あしらいもスムーズで、並んでいてもストレスを感じなかった。帯広駅からはちょっと遠いが、車ならぜひ寄ってほしい。

分厚い豚肉がドン・ドン・ドンと乗っている。柔らかくていジューシー。軽くペロっと食べることができる。
新しい店舗。この日は比較的並んでいる人が少なかったということで、ラッキー。

初めてでも楽しめるばんえい競馬

ばんえい競馬といっても、ほとんどの人はあまり知らないと思う。道民なら、今は見られないが、テレビCMを覚えている人もいるだろうし、地域によっては身近に接していた人もいるだろう。
ばんえい競馬は、以前は帯広、旭川、北見、岩見沢の4都市で開催されていたが、現在は帯広市が主催するばんえい競馬だけが公営競技として残っている。

夏に向けて十勝はいい季節を迎える。めっぽう暑い日もあるが、朝夕は涼しいので、近隣の観光がてら「ばんえい競馬」を体験してみてはいかがだろう。夏は、特にナイターがお勧めだ。家族向けのイベントも開催されていて、子供も楽しむことができる。僕はギャンブルがあまり好きではないので、競馬、競輪、ボート等、ほどんどやったことがない。この「ばんえい」に関してはレクレーションとして、過去に2度楽しんだ。ギャンブルというよりは、地元の郷土文化の興行に参加した感じである。一攫千金とか、無一文、オケラ街道で飲みつぶれ、などという光景はここでは想像できない。華やかさとは無縁、むしろ地元との交流を楽しむ場所である。

競馬場の建物の中。蛍光灯の青白い照明が、古い地下街を思わせる。売店や食堂がある。

ここでは、大金は動かない。その証拠は表彰式を見ると分かる。この日の優勝者の賞金は十数万円だった。副賞にお酒やお米が並んでいた。協賛金を出すと、自分の名前の冠レースもできる。1口1万円からだというから、ちょっとした記念、例えば結婚記念にとか、あるいは孫たちからの還暦祝いにといった風に使われている。セレモニーで賞金を手渡したり、記念撮影もできる。

表彰式の風景。一般人の協賛した人ではないかと推測できる。

十勝ばんえい競馬は、ほぼ年間を通じて開催されている。帯広のある十勝地方は、雪はそれほど積もらないが、寒さでは道内においても有数の地である。だから、1・2月の極寒の日も開催されているのは、北海道人の僕にもちょっと信じられない。マイナス20度が当たり前の帯広に、この時期競馬観戦に行く勇気は持っていない。ばん馬の幻想的な朝の風景をカメラに撮りたいというなら、厳冬期のこの時期をおいて他にないだろうけど。

ばんえい競馬に行ったのは夏だった。あまり入場者は多くなかった。やはり多くの観戦者が来てくれないことには商売として成り立たない。中央競馬会と比べ、ばんえい競馬は観光資源とはいえ「お寒い」状況だ。今は何とか持ちこたえているというのが現実。この先、画期的なことが起こらない限り好転していくとは考えにくい。今のうちに見ておくべし!

このように大勢でコースを整備している。直線コースで200メートル、2か所の障害がある。スタートからゴールまで、一緒に歩けば見ることができる。

早めに競馬場に行くと、有料のバックヤードツアーに参加できる。調教師と馬が生活する厩舎など、立ち入り禁止の区域も案内してくれる。人と馬の日常を垣間見ることができて、少しは「ばん馬通」になれる。と同時にばん馬運営に関わっている多くの人たちの苦労を知ることができる。ばん馬ファンの熱い思い、裏方で運営に一所懸命な人たちの思い、ばん馬はそうした人々の期待も乗せ、あの橇を引いているのだなあと思う。ちょっと切なくなる「ばん馬観戦」なのだ。

スタンドからの眺め。一つ目の山を越え、この後、ふたつ目に向かうことになる。

一日を屋台で締める

ばんえい競馬を早めに終え、夕食は北の屋台で楽しもう。帯広駅の北側にはたくさんの飲み処・食事処がある。いろいろ迷ってしまうので、とりあえず北の屋台まで行って考えるのが得策。屋台といったって居酒屋や焼き鳥だけじゃない。創作和食やイタリアン、フレンチなどもあって、やはりここでも悩むけれど(笑)。どこも結構混んでいるので、ここぞと思ったら無理やり入って詰めてもらおう。地元の人もいるが観光客も多い。隣り合うのも何かの縁。明日の予定などを話しながら、次の観光予定や2件目の情報収集も楽しい。

北の屋台。十勝というと海がないイメージだが、海産物も豊富だ。十勝の南東には長い海岸線が続く。最も漁獲量の多い魚が「鮭」。秋になると十勝の川では遡上する大量の鮭を見ることができる。